本年表は、遺伝子組換え植物に関係する国内外の事象、発表、動向などを、1850年の「種の起源」の出版から、2003年2月時点までのものを並べました。補足が必要な項目については、解説を用意してあります。解説のある項目は、クリックすると詳しい解説を参照できます。
ダーウィン(英)が「種の起源」を出版。生物は環境に適合した種が生き残り、自然に淘汰されるという進化論を発表した。
メンデル(チェコ)が「メンデルの法則」を発表。一般に、分離の法則、独立の法則、優劣の法則の3つがある。メンデルは7年間続けたエンドウ豆の交配実験を、「植物雑種に関する研究」として学会誌に発表した。しかし、当時は注目されず、彼の死後にその業績が広く認知された(1900年の再発見)。
コーエンとボイヤー(共に米)が遺伝子組換え技術を発見。 大腸菌のDNA(プラスミド)を、酵素を使って切り取り、そこにぶどう状球菌の遺伝子を組み入れることに成功した。人類による初めての遺伝子操作となった。
スタンフォード大学(米)のポールバーグ博士の呼びかけにより、1975年にカリフォルニアのアシロマ会議センターで、遺伝子組換えの安全性について世界初の国際会議が開かれた。アメリカ、イギリス、日本など世界の主要な研究者140人が参加し、遺伝子組換えの安全性や危険性などを討議した。 その結果、安全性の確保は物理的封じ込め(実験室の設備、設計、実験操作法など)と生物的封じ込め(実験室外での生存や増殖の可能性が少ない物質を用いるなど)で対応することとなった。これを受けて翌年、アメリカの国立衛生研究所(NIH)がガイドラインを公布した。
メルヒャース(独)らが、通常の交配では雑種を作ることができないジャガイモとトマトの細胞融合により、植物体細胞雑種「ポマト」を作る。ただ、一般商品化はされなかった。
文部省(当時)が大学の実験指針を、科学技術庁(当時)が大学以外の研究機関における「組換えDNA実験指針」を策定。
アグロバクテリウムを使った、初めての遺伝子組換え植物の作成が行われた(マックスプランク研究所[独]、モンサント社[米])。
農林水産省とキッコーマン(株)の共同研究により、オレンジとカラタチの細胞融合で「オレタチ」が完成。一般商品化はされなかった。
遺伝子組換えのキモシンが、オランダで開発(ヒストブロカデス社)される。キモシンはプロテアーゼというタンパク質分解酵素の一種であり、乳タンパク質の105番目のフェニルアラニンと106番目のメチオニンの、ペプチド結合を特異的に切断して凝固させるため、古くからチーズ製造に利用されている。
日本企業が遺伝子組換え技術によって作った健康食品「トリプトファン」をアメリカで発売し、38名の死者が出た。その後、アメリカの食品医薬品局(FDA)が発売を中止。ただ、遺伝子組換え技術に原因があるとは断定されていない。また、当時の資料も少なく、検証は難しい。
経済協力開発機構(OECD)が、遺伝子組換え植物と微生物の野外実験(作物の試験栽培など)の安全性評価基準を、「科学的原則」として作成。
カルジーン社(米)が遺伝子組換え技術によるトマト「フレーバーセーバー」をアメリカで発売。腐りにくくて長持ちすることが特徴。
アメリカで、遺伝子組換えの害虫抵抗性ジャガイモ、害虫抵抗性トウモロコシ、害虫抵抗性ワタ、除草剤耐性ダイズ、除草剤耐性ナタネ、除草剤耐性ワタ、高ラウリン酸含有カノーラ、ウイルス病抵抗性スクワッシュ、ペクチン高含有トマトなどの栽培販売が認可。
厚生省(当時)が遺伝子組換え作物の、害虫抵抗性ジャガイモ、害虫抵抗性トウモロコシ、除草剤耐性ダイズ、除草剤耐性ナタネの4作物種7品種の安全性を確認。
厚生省(当時)が遺伝子組換え作物の、害虫抵抗性ジャガイモ、害虫抵抗性トウモロコシ、害虫抵抗性ワタ、除草剤耐性トウモロコシ、除草剤耐性ナタネ、除草剤耐性ワタ、日持ちのよいトマトの7作物種13品種の安全性を確認(合計20品種)。
厚生省(当時)が遺伝子組換え作物の、除草剤耐性、雄性不稔性ナタネの1作物種2品種の安全性を確認(合計22品種)。
ロウエット研究所(英)のパズダイ博士が、レクチンというタンパク質を作る遺伝子を導入した遺伝子組換えジャガイモをラットに食べさせたところ、免疫力の低下がみられたと発表。しかし、事前に知らされていなかった研究所が反論し、実験は不十分なものであったとの指摘によって、博士は研究所を解職された。
厚生省(当時)が遺伝子組換え作物の、除草剤耐性トウモロコシ、除草剤耐性ナタネ、除草剤耐性害虫抵抗性ワタ、除草剤耐性テンサイの4作物種7品種の安全性を確認(合計29品種)。
Btトウモロコシは、Bt菌の一部の遺伝子を組み込んだトウモロコシであり、この遺伝子の作るBtタンパク質が害虫であるアワノメイガを殺虫する。しかし、コーネル大学(米)のローシー助教授グループは「このBtトウモロコシの花粉はオオカバマダラという蝶の幼虫に対して悪い影響を及ぼす」との研究論文を、権威あるイギリスの雑誌「ネイチャー」に発表した。 狙った害虫以外にも害を及ぼすとの実験結果に反響は大きかったが、その後ローシー助教授自身が、データの読み方に行き過ぎがあったとの見解を発表。また、オオカバマダラの幼虫が出てくる時期には、トウモロコシはまだ小さくて花粉を付けておらず、仮に実験結果を認めても起こりえない現象であるとして一応の決着を見た。
クリントン大統領(当時:米)がヒトゲノムの解読をほぼ終えたと発表した。セレーラジェノミクス社(米)が99%以上を解読し、日米欧の「国際ヒトゲノム計画」チームが86.8%を解読(米:67%、英:22%、日本:7%)。
消費者の選択の目安となるよう、農林水産省はJAS法(農林物資の規格化および品質表示の適正化に関する法律)による遺伝子組換え表示制度を実施した。 加えて厚生労働省は、遺伝子組換え食品の表示の義務化を食品衛生法に盛り込む。これは、大豆、トウモロコシ、ジャガイモ、ナタネ、ワタの5種類の農作物(合計43品種)と、大豆やトウモロコシを原料とする24品目の加工食品について、「遺伝子組換え」と「遺伝子組換え不分別」の表示を義務付ける制度。
年々増加している遺伝子組換え農作物の作付け面積が、ついに5.260万ヘクタールに至った。なお全体の99%は、作付け上位4カ国の合計で占められる(アメリカ3,570万ヘクタール、アルゼンチン1,180万ヘクタール、カナダ320万ヘクタール、中国150万ヘクタール:国際アグリバイオ技術事業団調査)。 栽培作物の内訳は、大豆(63%)、トウモロコシ(19%)、ワタ(13%)、ナタネ(5%)。除草剤耐性作物が77%、害虫抵抗性15%。
生物の多様性を保全するため、遺伝子組換え生物の輸出入に関する国際的な枠組みを定めたバイオセイフティ議定書(別名カルタヘナ議定書)が採択。批准国は、遺伝子組換え生物を輸出入する場合には、必要な情報を事前に提供するなどが義務付けられる。2002年9月現在の批准国は34カ国。日本は、議定書を担保する国内法が整備され次第批准する方針で、2002年7月には、関係省共同でカルタヘナ議定書国内担保法制定準備室が設置される。アメリカは批准していない。
日本が中心となり、各国と共同で進めてきたイネゲノムの重要部分の塩基配列解読が終了した。共通の品種「日本晴れ」のDNAを対象とし、日本、アメリカ、中国、台湾、フランス、インド、韓国、ブラジル、タイ、イギリスによる国際コンソーシアム「国際イネゲノム塩基配列解析プロジェクト(IRGSP)」で解読を進めてきた。日本では、農業生物資源研究所と農林水産先端技術研究所が共同で参画し、全体の60%近くを解読した。
厚生労働省が遺伝子組換え食品の表示義務(食品衛生法)に、ジャガイモを主な原料とする6品目の加工食品を追加。